骨折は急性期からリハビリテーションを

上肢の骨折、下肢の骨折、いずれも手術で整復後に金属プレート等で内固定したり、徒手で整復後にギプス、添え木などで外固定をします。固定期間中は自分でトイレに行く、腰を掛けて食事をする、などの最小の動作を除いて骨折した上肢・下肢を繰り返して大きく動かさないように指示されます。

固定期間中でも、骨折部がしっかり固定されていたり、骨癒合の兆しが見えてきた場合は、骨折した上肢を布で覆って首から吊り下げて歩いてよい、骨折した下肢は浮かしたり半分ぐらい体重をかけて歩いてよい、などと指示が変更されます。

このように早く体を動かすように指示されるのは、動かすことにより筋肉の衰えや関節が固まるのを防ぐ、喉の奥に痰が溜まるのを防ぐ、胃腸や心臓、肺、膀胱の働きが低下するのを防ぐ、などのためです。

早くから体を動かす際、最初は訓練の先生や看護師の方が付き添ってくれますので安心ですが、一人での歩行を許可された後、上肢の骨折でも片方の上肢を固定して歩くとふらつき易く、下肢の骨折では半分くらい体重をかけて歩行器や松葉杖で歩行する間にバランスを崩して全体重が掛かってしまう、といったアクシデントを生じがちです。

このような危険を避けるため、骨折部が癒合して安心して歩けるまでベッドで休みたいと思うでしょう。

しかし、転倒をして激痛を伴う骨折、初めての入院・手術を経験した高齢者では精神的なトラウマである転倒後症候群といわれる引っ込み思案・閉じこもり状態が転倒後数ヶ月間続きます。

とはいっても、大腿骨近位部骨折を受傷した高齢者が骨癒合の完成するまで約3ヶ月間ベッド上で休みますと筋力の低下、体調の変化などで再び立って歩けなくなる可能性がありますので、骨折は急性期から早く立つ、動くといったリハビリテーションが必要です。

骨折治療中の安定した歩行や身だしなみに骨折サポートグッズの活用も

早く転倒後症候群から抜け出し、骨折前の気持ちに戻すには、病院の白い布で肩から上肢を吊り下げる、有り合わせのサンダルや突っ掛けで不安定な歩き方をする、などを卒業して、上肢をおしゃれなワンタッチで装着できる専用布で覆い肩から下げる、足にはきちんと布で覆い歩き易くした専用靴を履く、などが助けになります。

きっと、骨折部をおしゃれにして動きに自信がつくと早く確実に転倒・骨折後のトラウマから抜け出して住み慣れた所での自分らしい生活の復活、密かに思い描いていた希望の実現、周囲の人からの敬意、は実現できると自信が湧きます。


2019.06.10公開 著者:原宿リハビリテーション病院 名誉院長 林 泰史先生 編集:骨折ネット運営事務局(株式会社プロウェーブ)