小さなひびから開放(複雑)骨折まで 骨は基本的に丈夫な組織で、とくに若く健康な人の骨は日常的な負荷の数倍もの外力に耐えられます。 骨折とは、骨が持つ強度以上の外力が加わったために、ひびが入ったり、折れたり、砕けたりした状態のことです。 骨折には気づかないほどの小さなひびから、命にかかわる重症の骨折まであり、その状態によって治療法が異なります。 大きな骨折や重症の骨折を受傷した人はほとんどの場合、緊急に医療機関へ運ばれて治療が開始されますが、気づかないほどの小さな骨折(ひびなど)の場合は、放置したために骨が癒合(くっつくこと)しないままになることもあるため、骨折については正しい診断と適切な治療が重要です。 また、「難治性骨折」という治りにくいタイプの骨折もありますが、最新の治療法で骨の癒合を促進させることもできるようになってきました。 このように、骨折の治療法は日々進化しています。
骨折とは
骨折の種類
骨折は、骨の折れ方などによっていくつかに分類されます。それぞれを簡単に解説しましょう。
- < 骨折部と外界との関係による分類 >
- 開放骨折(複雑骨折) 皮膚や軟部組織(筋肉や皮膚など)が破れ、その傷口から骨折した骨が露出した状態。傷口が泥や細菌で汚染されていることが多い。 皮下骨折(単純骨折) 骨折部位の皮膚が破れていない状態。単純骨折または閉鎖骨折ともいう。
- < 程度による分類 >
- 完全骨折 骨の連続性が完全に断たれた状態、つまり完全に折れている骨折のこと。 不全骨折 骨にひびが入った状態。一部の骨の連続性は断たれているが、骨全体の形状は保たれているもの。
- < 原因による分類 >
- 外傷性骨折 正常な骨に一時的に強い外力が加わって生じる骨折。 疲労骨折 過度のスポーツなどによって集中して繰り返し力が加わり、ごく小さなひびが徐々に大きくなって起こる骨折。 病的骨折 もともとある病気のために、通常では骨折が起こるとは考えられない軽微な外力によっても骨が折れることがある。そのようにして起きた骨折。
骨折の治癒
骨折の治癒は、炎症期・修復期・リモデリング期という3つの段階で進み、それぞれが、重なりながら治っていきます。 骨は常に新陳代謝を繰り返していて、折れた部位分にできた新しい骨はさらに長期に渡って作り変えられ、やがて、ほとんど元どおりに治ります。 骨は再生能力が高い組織の1つなので、適切な治療さえ行えば、骨折後も多くの場合は正常な機能を取り戻します。 骨折部では骨髄から出血して、血腫という種々の成長因子を含んだ凝血塊ができ、骨折部の周囲組織の炎症がおさまるとともに様々な細胞が増殖して骨癒合に向かいます。また骨折部周辺の骨膜にある骨膜細胞が骨芽細胞という新しい骨を作る細胞に変化し、骨の形成を始め、骨の修復が始まります。
第1段階【炎症期】 骨折直後から2~3週間 大きな外傷に基づく骨折部では炎症症状が現れ、また骨髄から出血して、血腫という種々の成長因子を含んだ凝血塊ができます。やがて、炎症がおさまるとともに血種内の血小板などから出てくる成長因子が様々な細胞を増殖させます。
第2段階【修復期】 骨折して数日後から数週間 骨折部周辺の骨膜部位分にある骨膜細胞が骨芽細胞という新しい骨を作る細胞に変化して、新しく作った軟骨の鋳型を骨で置き換える様にして骨の形成を始め、骨の修復が始まります。
第3段階【リモデリング期】数週間~数カ月(場合によっては数年) 軟骨から骨に置き換わった脆弱で、変形・デコボコの見られる骨折部の骨が元々の骨に近い形の強い骨に変化していきます。もう一度、形を作る(リモデリング)第3段階は年余にわたって続きます。