骨折予防やQOLの改善のために薬物治療が行われる
現在骨粗しょう症の治療に使われている主な薬には、次のようなものがあります。
骨粗しょう症の治療で主流となるのが、骨を壊す働きを抑える骨吸収抑制薬と呼ばれる薬です。骨粗しょう症は骨をつくる骨芽細胞の働きよりも、壊す破骨細胞の働きが増すことで起こります。2種類の細胞のうち骨を壊す破骨細胞の働きを抑制するのが骨吸収抑制薬で、骨量を増加させて骨折を予防する作用があります。骨吸収抑制薬で主に使われるのはビスフォスフォネート製剤と呼ばれる薬です。週1回服用するタイプでは錠剤のほか服用の負担が少ないゼリー剤があり、月1回のタイプでは錠剤のほかに点滴や注射剤なども登場しています。それ以外の骨吸収抑制薬には、SERM(選択的エストロゲン受容体作動薬)という女性ホルモンのエストロゲンと似た作用をする薬剤のほか、抗ランクル抗体というものがあります。
ほかにも、カルシウムの吸収を助けると同時に筋力の低下を防ぎ転倒予防効果もある活性型ビタミンD3、カルシウムが不足しているときに使用するカルシウム製剤、骨をつくる骨芽細胞の働きを助ける副甲状腺ホルモン薬などがあります。どの薬を使うかは骨や体の状態、年齢などを総合的に判断して選択されます。 近年骨粗しょう症の治療は大変進歩し、ひとりひとりに合わせた最適な薬を使うことで、骨折の予防はもちろんQOL改善にも効果がみられるようになっています。
治療中は食事と運動の改善をあわせて
骨量は、加齢や閉経後の女性ホルモンの分泌減少に伴い低下するので、高齢者や閉経後の女性はどうしても骨が弱くなりがちです。しかし、いくつになっても骨が丈夫で、活発な毎日を過ごしている人は大勢います。その違いは生活の中にあります。
食事では、骨の材料となるカルシウムに加え、カルシウムの吸収を助けるビタミンD、骨の形成を促すビタミンKをしっかり摂ることが大切です。たんぱく質も重要な栄養素のひとつで、骨の成分であるコラーゲンの材料となるだけでなく、骨を守る筋肉をつくるのにも必要です。運動は骨に刺激を与えて骨を強くするとともに、筋力をつけて転倒しにくい体をつくってくれます。下半身を鍛えるウォーキングや、毎日手軽に続けられる体操を毎日の習慣にしましょう。
このような食事や運動は、薬による治療を始めても一緒に行っていく必要があります。骨を強くする生活習慣は、将来の骨折を防ぎ治療の効果をさらに高めることにつながります。