大腿骨頚部骨折を防ぐのに効果的

転倒時の衝撃を低減してくれる

前回のトピックスでも触れたように、転倒は年齢とともに増加する傾向にあります。転倒が増加する原因として、加齢に伴う筋肉や関節の衰えのために少しの段差でも躓(つまず)いたり、ひっかかりやすくなることが挙げられますが、他にも裾や袖の長い服を着ている、風邪薬や睡眠薬など一部の薬を服用して眠気やふらつきを生じているなどの場合が考えられます。

転倒を防ぐには、こうしたいろいろな原因を知った上で、転ばないように体調や環境を整えていくことが大切ですが、万が一転んでしまったときの対策として近年普及し始めているのが、「ヒッププロテクター」です。

ヒッププロテクターは、転倒時に骨折しやすい大腿骨近位部の骨折を予防する下着で、装着すると、大腿骨頚部にあたる部分に挟み込まれているパッドが転倒時の骨に加わる衝撃を少なくしてくれます。

開発されたデンマークでは、特別養護老人ホームに入所している65歳以上の高齢者700人を対象に調査研究が行われ、大腿骨頚部骨折の発生率が2分の1になったというデータがあります(※)。

使用はお医者さんの指導の上で

以前のヒッププロテクターでは股関節部分に密着させて装着しなければならず、材質が硬いもので作られていたことから「暑苦しい」「ごわごわして着け心地がよくない」「脱衣時に不便」といった不満が出され、せっかく付けてもしばらくすると外してしまう、というケースも多くあったようです。

やがてその有効性が注目されるとともに、構造や素材に工夫が重ねられ、現在ではパンツタイプやベルトタイプ、太ももまで覆うタイプなど、着用する人や目的に応じたさまざまなものが介護用に市販されるようになりました。

ただし、現時点(2018年)では医療保険、介護保険の給付対象になっていないため、購入する際は自費となります。また、使用する人によっては一人での着け外しが難しかったり、長時間着用するのが辛かったりというケースもあるようです。

購入する場合は、かかりつけの医師やご家族とよく相談し、自分に向いているのかどうか、またどんなタイプのものを使えばいいのかを検討しておきましょう。

※ 林泰史 編著『大腿骨頚部骨折後のリハビリテーション』(真興交易医書出版部)p.44